2011年1月22日土曜日

北京の救急車

先日、職場で仕事をしていると、オフィスの反対側から、うなり声が聞こえてくる。様子を見にいくと女性の従業員が腹を抱えて床に這いつくばって、もだえている。お腹が酷い痛みらしく、耐え切れずにもがいているのだ。

早速、近くの女性従業員に介護をしてもらいながら、救急車を呼んだ。

救急車の隊員が、担架を抱えて、10分ほどでオフィスに到着。

苦しみ、担架に乗ることを拒否する女性従業員を、なだめて何とか担架に乗せ、落下を防ぐためのベルトを締めたところで、その隊員が、僕に何かを言っている。

中国語なので意味不明でキョトンとしていると、担架を持ち上げるしぐさを見せた。つまり、「担架を持て」ということらしいのだ。

担架の反対側を見ると、確かに当社の男性従業員が構えている。

気合を入れて、担架を持ち上げ、エレベーターでロビーに下り、救急車まで搬送する。女性とはいえ、それなりに重みがあり、手がプルプル状態ではあったのだが、落とすわけにはいかないので高さの違う救急車への引き上げまで何とか踏ん張った。

そこからは、中国語の出来る同僚にバトンタッチして、救急車に同乗せずに見送り側に回った。女性従業員は、無事だったので、何よりだったが、同僚の話を聞くに、到着後に150元の利用料金を支払ったそう。そして、救急車の道中は、しっかりと信号は守るし、緊急という感じの運転ではなかったらしい。確かに、去っていくときにサイレンもなかった。

海外では救急車が有料という国は多々あるので、それは良いとしても、搬送もしないし、緊急的な輸送もないという救急車に、まだまだ改善の余地はありそうだ。

2011年1月9日日曜日

キレとコク、Stewart Copeland

The Policeが好きだ。

フロントマンのStingは作曲の才能はあるし、カッコいいし、ベースも上手い。ギターのAndy Summersだって、さり気無く素晴らしいギターを聞かせてくれる。だけれども、個人的には、この二人の影に埋もれがちなDrummer、Stewart Copelandが実はThe Policeの音楽的な根幹にあると思っている。

同じリズムをキープしていながら、微妙な強弱をつける事によって単調でシンプルなリズムを感じさせず、時には活き活きと、時には緊張感を生み出し、聴く耳を飽きさせないのだ。彼の特徴は、なんといっても、迫り来る追ってくるような緊迫感あるリズムとドラムの音圧から形成されるグルーブ感にあるといっていい。

それは、よく出来たコーヒーのようだ。

ハイハットとリムショットから来る「キレ」とバスドラムの音圧という「コク」の二つが絶妙なバランスで組み合わさってリズムを形成しているからだ。

レゲエリズムのロックへの導入ということばかり、注目されているようだが、それは一部が取りざたされているだけで、3人というバンド編成で音数的に制約がある中で生み出された彼のシンプルながら多彩な雰囲気を醸し出すドラミングスタイルは、その後のドラマーに多大な影響を与えたことは間違いない。

幾つかの曲を挙げてみる。

Can't Stand Losing You

出だしのバスドラムの迫り方、38~51秒目のリムショットの入れ方や1:45~1:59秒目までの緊張感の高まりをハイハットの微妙な開き方とクレッシェンドをつけることでドラマティカルな展開を弾き出している。

Roxanne

シンバルとハイハットの響きが素晴らしい。ギターは単調・淡白なカッティング、テーマの部分もRoxaneを繰り返すばかりの非常に単調な繰り返しながら、シンバルとハイハットを主体とした多彩なドラミングによって、メリハリと緊張感のある音楽を創り上げている。

There is a hole in my life

当方のお気に入りの曲。ギターのAndy Summersは、単調なカッティングを繰り返すだけなので、この曲もStewart Copelandのスパイスが効いてくる。フロアタムとバスドラという一風代わったコンビネーションに切れのいいハイハットとシンバルが乗っかってきて、絶妙なリズムを生み出す。彼が全身全霊で叩くような飛び散るようなシンバルの音も魅力で、この曲は彼のドラムスタイルの象徴といっていいくらいに凝縮されている。後半で繰り返し叫ばれるタイトルコールの裏で縦横無尽に叩きまくる彼のドラムは最高。この曲は録音もよく、オーディオ試聴のレファレンスとして使えるほどだ。ハイハットの音圧を感じてみたい。

Don't stand so close to me

有名曲だが、これもまた彼のドラミングの好例。もう一つの特徴は、「カッ」とスネアドラムの際を叩く、リムショットの効果的な活用だ。これが入ると、緊張感が増す。冒頭は、ハイハットとバスドラという「キレ」と「コク」を駆使してリズムの流れを作り、50秒目くらいから不規則にこのリムショットを乗せることによってメリハリと緊張感を生み出すことに成功している。2順目から音圧のあるバスドラの上に乗っかって来るハイハットと絡むリムショットによる迫り来るような緊張感はスリリングそのもの。

Driven To Tears

バスドラ&シンバルによる抑制の効いたリズムから始まり、リムショットを加えて緊張感を高め、2順目でハイハットを開き気味に抑制度合いを緩め、手数を増やすと共に徐々に開放感を高めて最後は全力で叩きまくって解放感を表現するというドラマティックな展開は、まさに彼の独壇場で、同様の展開が、先のDon's stand so close to meや、Message in a Bottleなんかにも見られる。

De Do Do Do De Da Da Da

これまた大ヒット曲だが、軽くて明るい出だしかと思いきや、28秒目から突如曲展開が変わり、シリアスな緊張感が襲う。これもハイハット、リムショットとバスドラムを巧妙に組み合わせて緊迫感を高揚させている彼の仕業なのであるが、ここでは、曲を通してバスドラムの微妙な強弱によって変わる音圧が鍵。3:27秒から最後まで40秒近く繰り返されるテーマが何故飽きないのか、が彼のドラムとThe Policeのバンドとしての凄さを解き明かす鍵だと思う。

Walking on the moon

これまたバスドラ、ハイハット&リムショットというお決まりの3点セットを絶妙な強弱や打ち所を変えながら変幻自在にノリを生み出す好演奏だ。

Murder by Number

The Police後期になると、彼のテクニックに磨きがかかっている。この曲では浮遊感漂うAndy Summersのギターも印象的だが、この後ろで小刻みに様々なテクニックを駆使して多様なアプローチでフロントを鼓舞するStewartのドラムが秀逸だ。The Policeの特徴として、テーマを繰り返しつつフェードアウトしていくというスタイルが多々見受けられるが、そのフェードアウトする時のドラムに耳を傾けると遊び後心満載のStewart Copelandのドラミングが垣間聴こえて面白い。この曲はその典型といえる。

彼と同年代のドラマーに、The Policeと同編成のCanadaのロックバンド、RushのNeil Peartがいる。Neil Peartは超絶的な変則リズムを機械の様に正確無比に叩く、知る人ぞ知る凄腕ドラマーなのだが、ノリの点で言うと、Stewart Copelandには及ばないと思う。

Rush及びNeil Peartも大好きなので、The Policeとの対比も交えて彼らについて書いてみたい。

2011年1月3日月曜日

RightとLeft

先日、映画を英語字幕つきで見ていたら、"He is left"という表現が出てきて、おやっと思った。おそらく、"He has left"を誤って記載したのかと考えるのだが、これをみて、ふと考えるものがあった。

"He is left"は、「彼は左だ」となるところに違和感を覚えたのだが、これが「彼は居ない」という意味だとするならば、その反対語の"He is right"はどういう意味なのだろうかと思ったのだ。

右は正しくて、左は不在というのは、右は正しいから認められて存在し、左は正しくないから去るというように思えないだろうか。確かに統計としても右利きが多いから、右手の方が強いし、権利を主張するときのしぐさとしての右手を振り上げるとか、いろいろあるのだろうと思って、語源辞典を調べてみた。

right (adj.2)
"opposite of left," early 12c., riht, from O.E. riht, which did not have this sense but meant "good, proper, fitting, straight" (see right (adj.1)). The notion is of the right hand as the "correct" hand. The usual O.E. word for this was swiþra, lit. "stronger." "The history of words for 'right' and 'left' shows that they were used primarily with reference to the hands" [Buck]. Cf. similar sense evolution in Du. recht, Ger. recht "right (not left)," from O.H.G. reht, which meant only "straight, just." The usual PIE root (*dek-) is represented by L. dexter (see dexterity). Other derivations on a similar pattern to English right are Fr. droit, from L. directus "straight;" Lith. labas, lit. "good;" and Slavic words (Boh. pravy, Pol. prawy, Rus. pravyj) from O.C.S. pravu, lit. "straight." The political sense of "conservative" is first recorded 1794 (adj.), 1825 (n.), a translation of Fr. Droit "the Right, Conservative Party" in the French National Assembly (1789; see left).

確かに、"The history of words for 'right' and 'left' shows that they were used primarily with reference to the hands"と両手を参照している。比較としてleftをみてみた。

left
c.1200, from Kentish form of O.E. lyft- "weak, foolish" (cf. lyft-adl "lameness, paralysis," E.Fris. luf, Du. dial. loof "weak, worthless"). It emerged 13c. as "opposite of right," a derived sense also found in M.Du., Low Ger. luchter, luft. Ger. link, Du. linker "left" are from O.H.G. slinc, M.Du. slink "left," related to O.E. slincan "crawl," Swed. linka "limp," slinka "dangle."

やはり、左手が一般的に利き手ではないので「弱い」とか「変則的」というマイナスイメージの言葉と結びついているようだ。

それでは、leftとleaveのつながりは一体どうなんだろうと思って、語源辞典を調べたものの、直接関連付けた説明は見当たらなかった。関連後を探ってみると、leftoverがあった。
ここにヒントがあるかもしれない。

leftover
"something left over," 1891, from left + over. As an adj., "remaining, not used up," from 1897.

leftが「残されたもの」という意味を持つことを示しているが、右手が主体だから、残されたものが左ということなのだろうか。Leaveが他動詞で「残す」という意味、自動詞で「去る」という正反対の意味を持っているが、これをleftが結び付けているのかもしれない。

ちなみに、英英辞典でleftを調べると、この説明が面白い。

on the side of your body which is towards the west when you are facing north

英英辞典、英語の語源辞典は中々面白いということが良く分かった。