2010年12月25日土曜日

クリスマスに聴く一枚

必ず、クリスマスシーズンに聴く一枚がある。

それは、Tuck AndressのHymns, Carols and Songs About Snowというクリスマスアルバムだ。

Tuck Andressは、知る人ぞ知る通好みの凄腕ジャズギタリスト。

フィンガースタイルで、メロディ、リズム、ベースとパーカションを一人で全てこなしてしまう、まさにワンマンバンドなのだが、決して一人で弾いているとは思えないアンサンブルがあって、彼が爪弾くオリジナリティ溢れる美しい音楽の訴求度は半端ではない。

ジャズの大歌手、Carmen Mcraeに"One and Only"と形容された、Joe Passという、今は亡き渋いテクニシャンのモダンジャズギタリストが、ソロギターでジャズスタンダードを弾きまくるというコンセプトの、Virtuosoという一連のアルバムが原点にあると思うのだが、これを数ランク進化させたTuckの演奏を聴くとこれが一人の仕業かと先ず耳を疑う。

ボーカルの奥さんとのデュオ、Tuck and Pattiで、歌伴をするのに必要な音を生み出すために様々なテクニックを身に付けていったという話で、過度にテクニック先にありきの音楽に走らないことに合点がいく。

彼の演奏を今は無き狭い昔のブルーノート東京で初めて観た衝撃は忘れられない。予め彼の演奏をCDで聴いていたのだが、一人で奏法していることが信じられず、実際に観に行った訳だが、確かに10本の指と2本の手でCDと同じレベルの音楽を奏でている。

目を瞑って聴く分には、調和の取れた美しい音楽なのだが、彼の忙しなく手を動かして弾く姿を観てしまうと、そちらの方に気が行ってしまって、音楽に集中できなくなってしまうほど。右手も左手も絶え間なくリズムとメロディーを奏で、パーカッシブに弦を叩いてハーモニクスを出すなんてテクニックが出てきた時には鳥肌が立った。

ベースラインにコードとメロディーをのせるようにして弾いているのだが、単に合わせ技ではなくて、掛け算的に音が飛び出すのだ。

その日以来、大ファンになった。

ちなみに、ソロギターのレパートリーも有名曲を多く取り上げており、Carlos SantanaのEurope、Michael JacksonのMan in the mirror、Wes MontgomeryのUp and from itなど、ソロギターという制約を感じることなく、普通に音楽として十分に楽しめる。ちなみに夫婦でのデュオ、Tuck and Pattiでは、The Beatlesや、果てはJimi Hendrixの曲までソウルフルに演奏する。

Tuckは2枚のソロギターアルバムを発表していて、どちらも素晴らしい作品なのだが、今日はクリスマスアルバムの方を紹介したい。

Hyms, Carols and Songs About Snow - Tuck Andress

Silent NightやAve Mariaのような厳かな雰囲気の曲から、クリスマスのうきうき感を感じさせるSanta Claus is Comin' to Townといったスタンダード曲で構成されていて、飽きることが無いので、この季節は何度も繰り返し聴いて、クリスマスの雰囲気を楽しんでいる。

Tuckのギターは、Youtubeに沢山映像があるので是非見て欲しい。
人間味に満ちた情に溢れるギターと、忙しなく手を動かす姿を観ることができる。

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